第547回紀伊国屋寄席@紀伊国屋ホール 2010/07/21

さて、久し振りに落語会に行ってきました。
暑い日が続いているのは今更言うまでもないのですが、紀伊国屋ホールは駅から外に出ないで行けるので助かります。
客層は熟年層以上が大半を占めていて、落語ブームと言われているとはいえ、このクラスの落語会はまだまだ敷居が高いのかな、とも思います。チケットがすぐ売り切れるのも一因かも知れませんけどね。
今回の演目はなかなか渋めで、通好みと言っても過言ではないでしょう。
このようなホール落語と呼ばれる落語会では、事前に演者、演目が発表されていますが、それらの前に開口一番といって前座が高座に上がって一席伺うのが通例となっています。これは普段の寄席でも同じです。
この日は春風亭一朝門下の春風亭 朝呂久(しゅんぷうてい ちょうろく)が「道灌」を演じました。江戸城を築いた太田道灌公が若き日に狩りに行き雨に降られた折、一軒のあばら家を訪ね出てきた賤の女に雨具を所望したところ、盆の上に山吹の枝を出された。道灌公意味が判らず困惑していると、家来の一人が「七重八重花は咲けども山吹の実の(蓑)ひとつだになきぞかなしき」という古歌に擬えた断りでしょうというのを聞き「余は歌道に暗いのう」と嘆き、その後勉学に励み日本一の歌人になったという故事があります。これを隠居から聞いた長屋の主が、傘を借りに来たら断ってやろうと待ち構えて、例によって上手くゆかない、という噺。
隠居がちょっとおねえチックだったのが気持ち悪かった(笑)


さて本編最初は、彼の人間国宝五代目柳家小さんの孫である柳家花緑の一番弟子、二つ目の柳家 初花(やなぎや しょっぱな)演じる「悋気の独楽」。夜になるといつも出かけてしまう旦那を怪しんでお内儀さんが小僧に後をつけさせる。それに気づいた旦那は妾宅までついてきた小僧を買収する。妾宅で占いに使う三つの独楽を貰って帰るが、お内儀さんに嘘がばれ独楽も見つかってしまう。試しにその占いをしてみろといわれ小僧が独楽をまわすと…というスジ立て。
後半の小僧が独楽を廻すところは見せる要素が強いので、実際に見て楽しんでもらいたい噺です。
比較的ソツ無くまとめていたと思いますが、メリハリはあまり無かったように感じましたね。


本編二席目は、十代目桂文治の弟子、青森県八戸出身の二代目桂 小文治(かつら こぶんじ)演じる「虱茶屋」。ありきたりの遊びに飽きた社長(旦那)が虱を芸者衆や幇間に…という噺。かなりの珍品で、かつては八代目雷門助六が十八番にしていたが、この小文治師匠もよく演じているらしく、幇間が痒みを堪えつつ踊っているときの仕草など抱腹絶倒で、これこそ見ないと楽しくない噺の筆頭かも知れません。


本編三席目、仲入り前最後は、年配の方には桂小益とかぺヤングの人と言った方が通りが良いであろう九代目桂 文楽(かつら ぶんらく)演じる「厩火事」。年下のぐうたら亭主を持った髪結いの女房が亭主を試す噺。高座に上がるといきなり「悋気もので被っていて」と愚痴りだし、立川談志と掛っている喉の医者が同じ、という枕から入って行ったのは流石でした。先代黒門町文楽と比べるのは酷とはいえ、それを差し引いても肝心なところでかみ気味になったり、意図していないところで笑いが起きたり、というのが目立ってしまってあまり良い出来とは思えませんでした。


仲入りを挟んで四席目は、立川流所属の立川 談幸(たてかわ だんこう)演じる「水屋の富」。富くじで千両当ててしまった水屋の苦悩を描いたこちらも珍品。水屋という商売の説明から入って行き、決して明るいとはいえない内容の噺を、細かく笑いを取りつつさらっとまとめた辺りかなりの実力者です。さすがは立川流唯一の内弟子経験者。


最後は勿論この人、今や枕が長くて面白いというので有名になってしまい、ドキュメンタリー映画まで作られたという落語界の大御所、十代目柳家 小三治(やなぎや こさんじ)演じる「お茶汲み」。今回も「天皇の世紀」の文庫本を探して云々から紀伊国屋ホールのエスカレーターの話まで20分以上枕だったと思います。よく聞くと内容がそれほど面白いわけじゃないのですけどね。それはさておき「お茶汲み」という噺は、前日の吉原遊びを惚気ているのを聞いた仲間の一人が、その店の場所と花魁の名前を訊いて、その花魁が使った遣り口を逆に遣り返す…という内容。地味な噺なので演り手は少ないのですが、小三治師匠のは後半での花魁の表情の変化が何とも言えないおかしみを醸し出していて絶品ですね。


紀伊国屋寄席なんて十年は行っていなかったのだけど、意外とホールの奥行きがあった事に気づいて驚きました。最後列だったので高座まで少し遠かったなあ。


終演後さっさとルミネエストに向かおうと思ったら、お年寄りが多いのと通路が狭いのとで進みの鈍い事といったらもう。間に合ったから良いのですが、少なからず焦りました。これから気をつけよう(苦笑)


そのルミネエストですが、"GIRLS LIVE GARDEN”@LUMINE EAST Garden9 130 days.の日之内エミちゃんの回の2ステージ目がお目当て。
諸事情により会場推し的な形になってしまいましたが、カバー2曲含め計4曲、なかなか上機嫌な日之内節を楽しめました。


そしてなぜかほんやら洞に立ち寄って2杯ほど引っかけて帰宅。
また懐かしい出会いがありました。みんないろいろあるなあ(謎)