ベンノ・モイセイヴィチ(Benno Moiseiwitsch)

音源の整頓も兼ねて感想等をたまには書いてみようと思っていたので、まずは最近何枚か増えたベンノ・モイセイヴィチについて。
ベンノ・モイセイヴィチは1890年にウクライナオデッサに生まれ1963年に亡くなったピアニスト。1937年以降はイギリス国籍を取得し1946年には叙勲されている。
ウィキペディアによると”後期ロマン派音楽の解釈でとりわけ著名であり、なかんずくラフマニノフ作品の解釈は、作曲者自身が「精神的な後継者」と折り紙をつけたほどである。優雅で詩的かつ抒情的なフレージングと、華やかさと超絶技巧で名声を博した”とある。
またアラン・ロンペッシュの著作によると、第二次大戦中爆弾を防ぐ為の砂袋で壁が覆われたコンサートホールでしばしば演奏し延々と続く演奏旅行に疲れ果て心臓を悪くしてしまい、1950年代初頭から活動をセーブし負担のかかる奏法を減らしていったという。


かつてはディーリアスのピアノ協奏曲の録音くらいしか聴いたことが無かったのだが、その後色々な作曲家の曲を聴くことが出来たので忘れないうちに載せておきます。

ディーリアス作品の歴史的録音集。ピアノ協奏曲は1946年のスタジオ録音でコンスタント・ランバート指揮フィルハーモニアとの共演。ディーリアスらしさが強く出ているとは云い難い曲だが、演奏は昔から有名なものでこの曲の代表的名盤とされている。
このCDには他にもサモンズの弾いたヴァイオリン協奏曲とか、ベアトリス・ハリスンの弾いたカプリスとエレジーのような歴史的名演が収められていて、そちらはディーリアスの世界を堪能できる演奏となっている。
さて、ディーリアスのピアノ協奏曲にはライブ録音がある。

1955年プロムスのライブでバックはサージェント指揮BBC交響楽団。ライブならではのノリと、よりディーリアスに通じているサージェントの指揮によってスタジオ録音よりも更に踏み込んだ演奏になっている。
このCDは同じ組み合わせでラフマニノフパガニーニ狂詩曲も入っていて、これも見事な演奏である。
もう1曲スタジオ録音のラフマニノフのピアノ協奏曲2番が入っていて、モイセイヴィチのピアノは素晴らしいがリグノルド指揮フィルハーモニアはやや一本調子に聞こえる。
ラフマニノフのピアノ協奏曲2番にもライブ録音がある。

1956年プロムスのライブでバックはやはりサージェント指揮BBC交響楽団。音は少しこもっているが演奏は伴奏共々高貴な香り漂う名演。
このCDのカップリングには同じ組み合わせでベートーヴェンのピアノ協奏曲5番が収録されている。1963年3月6日のライブでおそらく最後の録音と云われている。ライブならではのミスタッチも何のその、アゴーギグを駆使した巨匠タイプの演奏を繰り広げていて、隠れたこの曲の名演と云えよう。
ベートーヴェンは得意なレパートリーだったようでソナタも何曲か入れている。

このCDにはベートーヴェンピアノソナタが3曲収録されていて8番「悲愴」と14番「月光」は1941年、21番「ワルトシュタイン」は1942年の録音。同門のシュナーベルとは全く違うロマン的なアプローチで、しかも見事な名技性と堅固な構築性を同居させた演奏となっている。


モイセイヴィチはまだ紹介したい演奏があるのですが、とりあえず今回はこんなところで。
おまけ↓
https://www.youtube.com/watch?v=XKDYla5C5cA