王子の狐

録りだめした落語を観ていたら「王子の狐」が出てきました。演じていたのは栄馬師匠(日本○話芸)。久しぶりでしたねえ。上方落語の「高倉狐」を初代三遊亭圓右師匠が舞台を東京の王子にかえて移したといわれています。
化かしたつもりの狐が実は化かされていたというちょっと落語としては毛色の変わった噺かも知れませんが、化かした側の人間も後で反省して詫びに行ったりするので後味は悪くありません。登場人物(狐も含め)全てが何かしら人間味を帯びていてどこか憎めないし、当時の風俗も良く描かれている、好きな噺の一つです。
今と違って当時(明治時代)の王子は畑ばかりのかなりの田舎だったし、狐が人を化かすというのもかなりの人が信じていたのかも知れません。


この噺は八代目春風亭柳枝師匠の十八番として有名で録音も残っているのでまずはそれでしょうね。存命当時は他の師匠連は高座にかけることは無かったそうです。今は先ほどの栄馬師匠もそうですが、ぼちぼちかかるみたいです。
私はかつて亡くなった十代目金原亭馬生で実際に聴いたのが初めてだったと思います。下げの馬の○のくだりがまだ子供だったのでピンと来なかった記憶があります。本当なら人間が言うべきせりふを狐に言わせているのがみそだと解ったのはしばらくしてからでした。