今戸の狐
えー、昨日に引き続きお狐様のお噂でも。今回は王子ではなくて、今戸の狐でございます。
とはいっても、王子の狐とは違い、こちらには本物の狐というのは登場してまいりません。
ここでいう狐と申しますのは、一つには稲荷神社の狐の像、もう一つが賽を三つ使う博打の狐、とこういうことになっております。江戸時代の噺家初代三笑亭可楽の門人良助の体験を基にしたお噺でして、当時の噺家の生活振りが良く描かれた作品でございます。
内職をしなければ生活できないし、さりとてそれを他人には知られたくない、といった芸人心理が巧みに盛り込まれていて、なかなか趣のある噺となっているわけです。下げもあらかじめ仕込まないとわからないので初心者には取っつき難いかも知れませんが、たまにはこのような通好みのお噺もよろしいのでは無いでしょうか。
かなりの珍品で、現在では演じる方もごくわずかでしょうが、やはり志ん生師と二人の息子がたまに演じていたものが良いでしょう。
「今戸の狐」金原亭馬生
余談