首提灯

この噺も落語ならではの不思議な世界です。江戸時代も中期となると、いくら侍であってもそうめったやたらに町民を斬るわけには行かなくなっていたので、この噺のように酔うとしつこく絡む人もいたらしいのですが、侍も紋に痰がかかったりしなければ斬るまではしなかったでしょう。
首を斬られても気付かずそのまんましばらく歩いていて、やけに首の座りが悪くて漸くわかる、そこが一番の見せ場です。各演者の腕の見せ所なのでいろんな演出がありますが、印象に残っているのといえば、圓生師匠の妙にリアルな首の傾き具合でしょうか。5代目小さん師匠は得意の剣道を彷彿とさせる首を斬る時の動作とその後の詩吟、8代目正蔵師匠は侍と町民の掛け合いと、首を斬られてからの息の漏れ具合との対比、これらも未だ記憶に新しい処です。
下げも実際に見なければ効果が半減してしまうので、是非一度は本物を見ていただきたい噺の一つです。