二人の貴公子

この「二人の貴公子(原題The Two Noble Kinsman、河合祥一郎訳)」も長い間シェイクスピア全集に含まれなかった作品です。ジョン・フレッチャーとの共作で、このコンビでの作品としては「ヘンリー八世」があります。
なぜシェイクスピア全集に含まれなかったかについては、17世紀に4回にわたって出版された二折本全集のどれにも収録されていないことや、1679年にボーモント&フレッチャー全集にはシェイクスピアの名前が無くフレッチャーの作品とされていたことなどがあげられるでしょう。シェイクスピアの名をかたった作品が当時たくさんあったのも原因の一つでしょう。
その後研究が進んで、現在では二人の合作であるのはほぼ間違いないとされています。
材源は「夏の夜の夢」と同じように「カンタベリー物語」の中の「騎士の話」と「英雄伝」の中の「テーセウス伝」です。
いとこ同士であるパラモンとアーサイトが、アマゾネスの女王ヒポリタの妹エミーリアの愛を競って決闘する物語に、パラモンに恋する牢番の娘の発狂を交えて描いた物語です。
上演も1928年以来何度もされており、日本でも2003年に横浜ゲーテ座で本邦初演されています。


尚、この二人の共作にはもう一つドン・キホーテ中の物語に材を採った「カルデニオ」というのもあったそうですが、これは残念ながら現在紛失してしまっているそうです。