目黒の秋刀魚

ぼちぼち秋刀魚の美味しい季節となりました。もう既に何回も我が家の食卓にはのぼっています。
この噺はとても有名なのであらためて説明するまでも無いのですが、一種の地噺でもあるし比較的単純な筋なので演者ごとにいろんな型があるようです。
私の持っている飯島友治さんの本の解説によると、雲州松江の松平出羽守が秋刀魚に出会い、帰城してから江戸中の秋刀魚を買い占め家臣に配る。諸侯と顔を会わせると「秋刀魚をご存じか? 治にいて乱を忘れず、下様の情を探っておかねばならぬ」と吹聴。そこに居合わせた黒田筑前守が秋刀魚を買いにやらせると、江戸には出羽守の買い占めで1匹もいない。仕方がないので房州からとりよせる、という禽語楼小さんの型や、将軍が秋刀魚と出会い御三家と世間話をするうちに水戸が名産だときき、長陽の節句の時に大広間で大名達が秋刀魚を焼き始めたので江戸中の半鐘が鳴り出す、みたいな事があり、さて焼きたてを将軍に差し出す。「これが水戸か」「本場物にございます」「なに本場? いやァ秋刀魚の本場は目黒だ」という稲荷町の型、が紹介されています。
私はどちらの型も聴いた事がありますが、稲荷町のは本人なのでともかく、二代目小さんの型はだれで聴いたのか記憶が定かではありません。先代馬生師匠のように極力地を避けた演り方もあります。
まあ、まずい秋刀魚を食べさせられて閉口する方が噺としては面白いかも知れませんね。地噺なのでそれぞれの噺家さんの素の部分も聞きどころではあります。